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まだあまり見えないはずの黒い瞳がゆっくり動き、目が合った。小さくふにゃふにゃで、首を支えてないとグラグラする。何をしても泣きやまない日は、具合が悪いのではないか病院を回り、あまりに静かに寝てると口元に手をかざし、息をしているか確かめた。
ある日、君の背が私を追い越し、君の手が私の手より大きくなってることに気付いた。君を片手に抱き、片手で買い物袋を持っていたのに、私の手から買い物袋を奪うと並んで歩く。
少しでも姿が見えなくなると泣いて追いかけてきたのに、いつの間にか私より長いアーチで速い速度で、先を歩いている。
私は追いつこうと少し早足になり、やっぱりやめたと自分の速度でゆっくりと歩いた。少しずつ離れていく君の背中を見る。私はそのまま立ち止まり、風に溶けた。



玄関のドアを開ける。入り込んだ風と一緒に「いってらっしゃい」と声がした気がして振り返った。
僕は背中を見送る懐かしい顔を探した。
その他
公開:18/12/04 21:58

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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