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玄関を開けたら黒いタイルの上に枯葉が1枚落ちていた。

手に取って見ると、虫喰い痕が笑ってくるので私も思わず微笑み返した。

こうして情が湧くと捨てるに偲びなく
家に入れてやった。

私は棚から読みかけの本を取り出し、枯葉の笑顔を撫でるように、抱く様にそっとページを閉じ、栞の代わりとした。

そう云えば“栞”の語源は
“枝折り”──『しおり』である。

山深い森で迷わない様、
道しるべとなる様、
枝を折ったのが始まりだそうな。

木の葉を言葉の森の道しるべとした自分の采配がとても見事で素敵な事に思えて……。



私は再び独り微笑んだ。
その他
公開:18/10/11 22:13

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
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◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
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【note】400字以上の作品や日常報告など
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