補欠パパ

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パパは僕が小さい時にウルトラの星に旅立った。怪獣と戦っていて、いつか戻ってくるから、それまで僕がママを守ってやるんだって思ってた。
今はお墓は宇宙と交信する場所じゃないのは知ってるし、お経はパパへの秘密の暗号じゃないのも知ってる。だから、小学校高学年になった今、ママが新しいパパを連れてきても驚いたりしない。
でも、あいつはまだ補欠だ。正式なパパじゃない。そんな補欠が父兄参観にやってくるというんだ。僕は補欠に、別に来なくていいと伝えた。なのに、当日は補欠は参加したんだ。

授業で何人か短い作文を読んだ。僕はウルトラの星に行ったパパの話を読んだ。
読み終わると後ろで獣みたいな声がして、先生もクラスのみんなも一斉に振り向いた。補欠が、泣いてる。それも声を出して泣いてた。なんで泣いてるんだよ。恥ずかしいじゃないか。
知らない顔して前を向いたら、ぽろりと熱いなんかがこぼれて落ちた。
くそっ、合格だ。
その他
公開:18/10/03 11:59
更新:18/10/03 12:24
スクー 父兄参加の補欠

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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