恋路ゆけば

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 寝坊して道を急いでいると、つまずいた。
 だけど地面に倒れ伏す前に、たくましい腕にいだかれる。
 お嬢さん、大丈夫ですか?
 山型帽をかぶった紳士に微笑みかけられ、柄にもなく頬が熱くなった。
 急いでいるのでしたら、わたくしめがエスコートいたしましょう。
 返事も待たずに私の手を取ると、紳士はスタスタと歩き出した。
 走り来る車をも静止し、なんの障害もなく進んでゆく。
 ああ、なんて心強いお方。
 この方とならこのままどこまでも……。
 だけどその時、ふと彼氏の顔がチラついた。
 今は喧嘩してるけど、あの人だって本当は頼りになるんだよなぁ。
 と、不意に足が止まった。
 前方を向けば、山型帽の紳士が怒りに赤く染まって立っていた。
 わたくしと居ながら、他の男のことを考えましたね!
 それ以来、嫉妬に狂った信号機の紳士に通せんぼされ、私は恋路を立ち止まり続けているのだった。
ファンタジー
公開:18/10/02 19:27
ファンタジー 紳士

猫春雨( 和歌山県 )

短編の執筆をライフワークとしています。
主に幻想的な作風で、童話寄りの、日常に潜む不思議を紡いでいます。
また、そう言った作品を使って豆本も製作。
普段は超短編というオチがふわっとした作品を書いているので、はっきりとオチの付けるショートショートは勝手が違うものですね(^^;

よろしくお願いします(^^)

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