透明人間になる薬

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私は長年、透明人間になる薬を研究している。それは私の失敗の歴史でもある。
部分的に透明になる薬なら開発できた。最初は皮膚が透明になった。
血管や筋肉が目下に晒され、周りはとても気味悪がった。
それはそうだ。私は何も人体模型になる薬を作ったわけではない。

その薬を改良したところ、今度は内臓が透明化してしまった。
人間ドックに行った際、臓器が透明になっていたことで判明した。
あれだけ苦労して胃カメラを飲んだにもかかわらず、再検査となった。

それからも何度も失敗した。
下半身が透明化。上半身が透明化。右半身が透明化。左半身が透明化。
一番良く出来たものは体が透明化した。頭だけが残された。
それから私は研究所で飛頭蛮と呼ばれるようになった。

私は今でも透明人間になる薬の研究をしている。
そんな私の頭皮が禿げ上がって見えるのは、きっと透明人間になる薬が私の毛髪にだけ作用しているからだろう。
公開:18/09/09 18:37
更新:18/09/12 18:33

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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