ドッペル玄関

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あたしは仕事を終え、ホテルの廻転ドアをくぐった。
ぐるぐるぐるり。
ドアから出ると、なんとあたしそっくりの女がもう1人!?
外に居たドアマンが近寄ってきて、
「こりゃドッペル玄関現象っすね」と言う。
「何それ?」
「何それ?」
とあたしたちは訊ねた。
「別の職への憧れが強いと、たまに分裂して出てくるんっすよ」
そういえば、作家になりたいってずっと思ってた⋯⋯。
「あなた作家なの?」
「ええ、貧乏小説家」
「確かに痩せてるわねぇ」
「あなた裕福そう!」
「事業が成功して大金持ちよ」
協議の結果、とにかく元の1人に戻ることになった。ドアマンの話によると「雑念を払って、また一緒にドアをくぐれば1人になれる」との事だ。

あたしたちは、再び廻転ドアをくぐった。
ぐるぐるぐるり。
でも、他にもなりたい職業ってあったわよねぇ⋯⋯と余計な考えが心をよぎる。
ああ、駄目だ。今度は10人に増えてるわ──。
ホラー
公開:18/09/09 17:19
更新:18/09/17 15:57
ドッペルゲンガー 谷山浩子

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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