月喰機関

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いつものように、ドン・キホーテに酒を買い出しに行くと、百円で売られているお月様が目にとまった。
「このお月さん、安いなぁ!」
月の幼体だから、大きさはピンポン玉ほどしかないのだが、細部のクレーターまでしっかりとしていて実に美しい。
俺はその小さな月を買って帰ることにした。

最初のうちは、餌として牛乳を与えていたのだが、いまいち喰いつきが悪い。試しに色々と与えてみると、どうも肉食だったらしく獣肉や魚肉を好んで食べた。数ヵ月も経つと身体も西瓜くらいに成長し、窓辺に浮かぶ姿は本物の月そのものになった。
ただ⋯⋯身体の大きさに比例して、食費が馬鹿にならなくなってきた。直径が1メートルを越す頃になると、到底、俺の給料で養うことが出来なくなった。
仕方ないので俺は育てた月を海に離した。きっと大自然の中でも、力強く生き残ってくれるだろう。

あれから数年が過ぎ、今では夜空に二つの月が浮かんでいる──。
ファンタジー
公開:18/11/03 19:50
更新:18/11/05 03:03
ドン・キホーテで買った月 スクー

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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