沸点

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彼女は沸点が低い。
「はぁ?!記念日を忘れてたの?!信じられない!!」
「すまない…でも、そんなに怒らないでくれ…」
彼女の頭からたつ湯気は勢いを増すばかりだった。
彼女は沸点が低いのだ。やがて彼女は体全部が気体になって、部屋は静かになった。だから、怒らないでと言ったのに。
いつものように部屋にドライアイスを撒いて、家を出る。一時間もすれば彼女は冷えて元通りだ。それまでにプレゼントの一つも買ってこよう。

プレゼント選びは難航して、たっぷり三時間も経ってしまった。とっくに彼女も元通りだろう。
家に戻ると、彼女は倒れていた。体は冷たかった。
気持ち多めだったドライアイスのせいか、二酸化炭素の中毒を起こしたようだった。不幸な事故だ。
だが、これを僕の責任にされてはつまらない。
動かない彼女にお湯をかけて、彼女を再び気体にした。家中の窓を開けた。
部屋に風が吹く。
さよなら、と呟いた。
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公開:18/07/11 00:16
更新:18/07/12 20:25

sakana

ショートショート好きです
学生やってます。

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