インキュベータ

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リサイクルショップでインキュベータ(孵卵器)を買った。
店主の指示どおり電源を入れ数日、中からか細く高い指笛みたいな音が断続的に聞こえてきた。少しずつ高さや音色の違う音たちがそれを追う。見えず匂いもしないが音たちはいた。
音たちは部屋で過ごし、夜更けにインキュベータに戻るようになった。歩くと弾みながらついてくる。肩にも乗る。

日に日に大きくなり和音を奏でるようにもなった。私が歌うとやや電子的な音でハモってくれる。明るい和音からひとしずく翳りがまじる和音へ変化する揺らぎなど、技術も磨かれた。
私の帰りが遅いと不協和音が鳴り響く。隣の部屋から壁ドンをされたので防音スペースを拵え、中で音たちと戯れた。

その後小さくなっていった音たちは、ある日窓際に整列した。

そして♪ファソラシ♭ドレミ♭ファソ―――――、と電子オルガンにも笛にも似た、いつか駅のホームで聞いた音を響かせて飛び去ったのだった。
ファンタジー
公開:18/07/12 02:00
更新:18/07/12 04:33

UKITABI

ショートショート初心者です。
作品をたくさん書けるようになりたいです。

「潮目が変わって」(プチコン 海)
「七夕サプライズ」(七夕ショートショートコンテスト)
選出いただきました。
 

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