コウノトリの花

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幼い頃、おばあちゃん家の近所の庭先で、うっすらと光るチューリップを見つけた。
「あれは、コウノトリの花さ。あのお宅にも赤ちゃんがきたのねえ」
おばあちゃんが言うには、赤ちゃんの宿ったお家に人知れず咲く、不思議な花らしい。
私は幼ながらにその美しさと神秘性に惹かれ、それからいろいろな家の庭でコウノトリの花を探した。
いつかは自分のところにもあの美しい花が咲くのだと思うと、毎日わくわくしてたまらなかった。
十数年後、私は素敵な人と出会って結婚をした。
夫は優しい人で、これでもかというほどの幸せに溢れた生活だったけれど、ついに子宝には恵まれなかった。
終生の二人暮らしは時を経て一人暮らしになり、それももう終わりを告げる。
何度目の夜か、一人きりの部屋のベットの枕元に、うっすらと光る薄桃色の花びらが落ちていた。
瞬間、全てに合点がいったような心持ちになって、その夜、私は花びらの舟へと乗り込んだ。
ファンタジー
公開:18/09/02 09:32
更新:18/09/05 22:53

ゆた

読んでくださってありがとうございます。
 * *
「予約の後輩くん」→「予約の後輩、水瀬くん」を交互に読む連作として、2タイトル通番で書いています。
【追記】
後半に入り、「予約の後輩くん」のみに切り替わりました。

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