【カンヅメ】2018/8/12(日)

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文藝冬夏社編集長、大久保は悩んでいた。
芥川賞作家、中野阿佐子が受賞後にすっかり書けなくなってしまったのだ。
──暫く静かな場所で過ごして貰うか。
彼は新人編集者、神田をデスクに呼びつけた。
──神田君。中野阿佐子先生をお連れして、弊社の保養地でカンヅメに。原稿を仕上げて貰って来てくれ。
──えっ?
──責任は私がとる。
──は、はい。
数週間後、出社した大久保の机上には中野阿佐子の新作原稿が置かれていた。
読み始めると、傑作だという事がすぐに分かった。
神田が出社して来たので満面の笑みで出迎える。
──素晴らしいよ。
──ありがとうございます!
──ところで、中野阿佐子先生は?
──そちらに。
神田が顔を向けた先には缶詰が入った段ボールが一箱。

ラベルには『Ham/中野阿佐子』と記してあった。

わなわなと震える大久保の掌中、原稿の隙間から「家庭用缶詰製造機」の領収書がはらりと落ちた。
ホラー
公開:18/08/12 16:02

椿あやか( 猫町。 )

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