病気になる診察券

病院に勤務している女が、患者の男に一目惚れした。男にもう一度会いたくて、自宅に診察券を送りつけた。この診察券を持って病院に来ないとあなたは病気になります、とそこには書いてあった。

女としては、唯一自分に出来る、もう一度男に会えるかもしれない方法として、「病気になる診察券」をやっとのことで考え出し、個人情報を流用した後ろめたさと恋が実るかもしれない期待で胸をいっぱいにし、清水の舞台から降りる心地でポストに投函したのだった。

病気になる診察券を受け取った男は、気味悪がり、
病院を恨み、病院に乗り込んで行って全てをつまびらかにし、女を罵倒した。

好きな男に罵倒され、病院を解雇され、たくさんのものを失い、結局病気になったのは女だった。もっとも、全ては、恋の病の仕業だったのだが。