時間葬 櫻の樹の下には

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 死後、好きな時代の好きな場所に遺骨を送ってもらえる『時間葬』のサービスがはじまった。地球が誕生してからに限定されるが、恐竜たちが闊歩する時代でも、ソクラテスが弁舌を振るっていた時代でも、中世の暗黒時代でもいい。

 世界中の人々がこぞって申し込んだ。それぞれの国によって行きたい時代と場所が異なるのもおもしろい。海外では聖人や英雄のいる場所を選ぶ者が多かった。

 日本の一番人気は、大正時代の晩春。
 舞い散る桜に混じって、こなごなにした骨を撒いてもらう。
 散骨は桜の根元に雪のように積もるが、ほとんどの人は桜に目を奪われて気がつかない。
 だが、まれに気配を感じて足を止める者もいる。
 その青年は、かすかな死の匂いを感じて足を止め、詩をしたためた。
「櫻の樹の下には」
SF
公開:18/02/13 14:37

K_Ichida( バンクーバー )

小説を書いています。
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公式サイト http://ichida-kazuki.com 
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使用している写真は全て私自身が撮影したものです。

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