溶けない雪

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ある日、世界中に溶けない雪が降った。雪は春になっても夏の陽差しを浴びても積もったままだった。人々は雪の処理に困り果てた。
目端の利く者がその雪の所有権を手に入れると保冷剤として売り出した。いつまで経っても冷たいままなので重宝された。
映画や芝居で雪が降るシーンにも使われた。本物の雪なので臨場感たっぷりだった。
ある芸術家がつくった雪だるまが美術館に展示されたのをきっかけに、雪だるまアートが流行した。
いつの間にか人々は溶けない雪の利用法を考え出し、活用した。雪の所有権を手に入れた者は大金を得た。
次の冬に降った雪も、溶けなかった。これでまた金儲けができる、と人々は喜んだ。
やがて、深刻な水不足がやってきた。雪解け水が枯渇したからだ。人々は困り果て、雪をなんとか溶かせないかと研究を続けたが、無駄だった。
数年後、地球は海の青と大地の白にきれいに分けられた惑星となった。人々は、いなくなった。
ファンタジー
公開:18/01/28 12:19

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