首無し

　首無しという妖怪の話は知っておるかい。
　首無しは、名の通り首の無い、四肢と胴体だけの化け物。幸せそうな女の首を搔き切ると、それを自分の身体に乗せて、首が腐り落ちるまで女になりきる。
　そして、変わり果てた姿に気が付いた家族を貪り食った後、次の首を探しに行くのだ。
　その首無しは、お鶴という器量好しの娘が、病に蝕まれて成り果てた姿だと、噂になっておる。
　ここだけの話だがな、そのお鶴は、結納前に顔が腐る病に掛かって、気狂いになってしまったそうな。
　美しかった顔がどろどろになる、愛した男は離れる、それで訳が分からなくなったらしい。自分の首を切り落とすと、そのまま身体だけで、男を探しに行ったとか。
　ところで、あんた、随分と臭いが、魚でも捌いてきたのかい。
　ほら、髪がほつれておるよ。全く、若い娘がしっかりしなさいな。直してやるから見せてご覧。


　ぼとり。