泣きぼくろ

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泣きぼくろがある人は泣き虫だなんていうが、僕は当てはまらない。男がめそめそするなんてカッコ悪いと思っているし、感動の奇跡なんてコピーが並んだ小説やドラマや映画でも泣かない。とはいえ赤ん坊の頃は流石に泣いただろうし、激痛に耐えたり目薬をさす時は生理現象として涙は出る。
でも感情的に泣いたことは一度もない。

そう恋人に話すと彼女は目を見開いた。
「あなたよく泣いてるわよ。涙もろいんだと思ってたけど。コンタクトがずれるのかしら」
彼女は不思議がっているが僕の方が不思議だった。泣いたことなどないし、視力はいい。きっと彼女の見間違いだ。…見間違い多い気がするが。

夜に僕らは家で映画を見た。
僕は泣かないが、とても哀しい映画だ。
途中、涙で化粧が崩れた彼女が僕に鏡を向けた。
僕が泣いている。そんな馬鹿な!

よく見ると顔が濡れているのは半分だけ。
もっとよく見ると僕の泣きぼくろが涙を流していた。
公開:18/03/19 20:58

砂塵

読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。

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